相続につきまとう親子や兄弟、親戚間でのいざこざについては、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ある地方では、郊外型の大規模な商業開発が進んでいます。山田さん(仮名)も、開発に伴う用地買収にかかる土地を所有していたため、かなりの売却金を手にしました。そのことは、親戚一同が知っていることです。
山田さんは、将来相続が発生したときに親族に争いが発生することを避けるため、兄弟とその子供、孫にまで全員に平等に相続してもらいたいという希望を持っていました。
そして、じぶんがあの世に旅立ってから親戚が争わないよう、公証役場を訪れて、相続に関する公正証書遺言を作成したとのことです。
遺言状の作成については、周囲からは言いだしづらいものです。ですから、何がしかでも財産がある人は、山田さんのように自らきちんと遺すことが大切になってくるのだと思います。
遺言は、「様式行為」とされており、様式違背の遺言は無効となります。その方式は民法に規定されています。
民法で規定されている遺言の方式には、自筆証書遺言という方法もあります。公正証書遺言、秘密証書遺言という方式の遺言をするためには、公証人の関与が必要ですが、自筆証書遺言は公証人の関与が必要ありませんので、お手軽に感じて利用されることが多いようです。
しかし、遺言を相続人に対する思いやりで遺すのであれば、自筆証書遺言よりも公正証書遺言のほうがおすすめです。それは、相続発生後の手続きの簡単さからです。自筆証書遺言にもとづいて相続財産の名義変更の手続きをする場合には、遺言の検認という手続きを経る必要があります。遺言の検認というのは一種の証拠保全の手続きで、遺言を公の場で確認するという意味合いがあります。この手続きは家庭裁判所に申し立てる必要があり、相続人に手間をかけることになるのです。
これに対して、公正証書遺言については、当初から公的な機関である公証人の関与により作成されているため、検認の手続きは必要ありません。
作成時点では、公正証書遺言は証人が二人必要である点などから、少し面倒に感じるかもしれませんが、相続人のためには、自筆証書遺言よりも公正証書遺言を残してあげるのが、思いやりということになるでしょう。